未来をプラス思考で回していこう
2025-01-31

新さっぽろとまと保育園は、厚別区の静かな住宅街の中にありながら、少し足を伸ばせば森や畑に囲まれる自然豊かな場所にあります。定員60名、職員30名以上が在籍、地域密着型の保育園として地元の子どもたちを支えています。特に、【絵本の読み聞かせ】【食農育】【リズム遊び】の三本柱を中心に、【情緒の安定】【食を通して自然の循環を感じる】【しなやかな筋肉を作り協調性を育む】ことに力を注いでいます。さらに、職員同士の風通しの良さや、業界全体が直面する課題解決への前向きな姿勢が特徴です。ここでは同保育園での権利擁護の取り組みを高井園長にお聞きしました。
社会福祉法人小野幌福祉会 新さっぽろとまと保育園 園長 高井 博史
職場環境とコミュニケーションの工夫
新さっぽろとまと保育園では、職員同士が安心して意見を交換し、働きやすい職場環境をつくることを大事にしています。このため、トップダウンの指示に頼るのではなく、現場の声を拾いやすいフラットな体制作りが行われています。また、クラス担当の他に、【行事部】【あそび部】【研修部】【絵本部】【畑部】【環境部】の部会があり、いろんな職員とコミュニケーションを取るような環境にあります。また、新人職員に対しては、指導役となる先輩職員が、困りごとや不安を気軽に相談できるように心がけています。更に、コミュニケーションを取る中で職員一人ひとりの個性や得意分野を見いだし、その得意分野を発揮できるような役割分担を進める工夫を行っています。
毎朝、玄関に受け入れ担当係を配置し子どもの様子を観察しながら保護者とのコミュニケーションを取ります。その上で【玄関ノート】に記録します。朝だけでなく日中受けた連絡、その日にあった怪我や体調不良の様子なども記録し、迎えに来た保護者に伝えられるようにしています。たとえば「○○ちゃんが△△で転んで××をぶつけて怪我をした」や「○○ちゃんが何時に何℃の熱あり。」(30分毎に検温し記入)など保育園での様子を具体的に記入します。その日にあった出来事は職員全体で共有し、どの職員でもお迎えに来た保護者に伝えられるようにしています。こうすることで保護者から安心感と信頼感を持ってもらうことを目的としています。また、月に一度行われるミーティングでは、【玄関ノート】をもとに、ヒヤリハットの集計を行い、改善点について全員で話し合い、職員全体が一体感を持って保育に取り組んでいます。
新人職員が安心して働けるように、年齢の近い先輩職員がサポートし、実際の保育現場で困難な状況に直面した際の対応方法を具体的にアドバイスします。また、【先輩職員がすぐに相談に乗れる環境作り】をモットーに、昼休みや業務終了後に個別に相談できるような声掛けを行い、新人職員の不安や悩みに寄り添っています。このような取り組みが、新人職員の離職率低下にも繋がっていると思います。

取り組みは日常の中で
職員同士のコミュニケーションを高めるため、また、信頼を深めるために日常的に挨拶や感謝の気持ちを伝え合うように心がけています。保育の始まりと終わりには「おはようございます」「お疲れさまでした」「さようなら」「ありがとう」といった声が自然と飛び交い、職場全体に温かい雰囲気が漂っています。当たり前のことですが、挨拶や感謝の気持ちを相手に伝える日々の積み重ねが、前向きに働ける環境を作り上げています。また、保育園として、子どもの前で大人が正しい言葉で良いやり取りを見せることで人生の先輩としてお手本を示したいと思っています。
保育園では、職員全員が参加できる会議を定期的に行い、業務の進捗状況や新しい取り組みの提案について話し合います。常勤職員は保育園全体の業務を行う部会(【行事部】【あそび部】【研修部】【絵本部】【畑部】【環境部】)に所属し、各部で話し合った内容を職員会議に議題として提出します。そして、提出した議案をさらに職員会議で議論することで、すべての職員が園の方針や課題を共有し、自分の意見を話せる機会を持てるようにしています。
保育士という仕事は心身ともに負担が大きいため、職員のメンタルケアにも注力しています。自己評価アンケートや面談を通じて、職員一人ひとりの健康状態や仕事に対する満足度を把握するよう努めています。また、職員研修ではリフレッシュできるような楽しく保育にも繋がるような研修を企画しています。
このような職場環境の工夫を通じて、職員全員がやりがいを持って働ける職場作りを目指しています。その結果、子どもたちへの保育の質が向上し、より良い保育環境が実現されていると思っています。

課題をプラスに変える発想
保育の現場では、虐待防止や権利侵害を防ぐ取り組みが重要視されています。保育士は子どもとの接し方一つひとつに細心の注意を払い、外部研修や園内研修を通じて、言葉遣いや行動について学び日々確認しています。たとえば、【手をつなぐ】という動作においても、その時の子どもの気持ちに寄り添えているのか、大人の都合で【手をひく】行為になっていないかなど、適切に行動することを心がけています。
子どもの健やかな成長には、保護者や地域の方々との信頼関係も大切です。地域に向けた【子育てサロン】【子ども食堂】を引き続き継続しながら、卒園児や保護者と地域の方々に向けて発信したいと思っています。
また、保護者から寄せられた「園での活動についてもっと知りたい」という声を受けて、今まで行ってきた行事写真の張り出しの他に、保育の様子を画像で公開する取り組みを始めました。このように、保護者からの声を日々の改善に活かし、保育の透明性を高める努力を続けています。
新さっぽろとまと保育園では、子どもも大人もがやりがいを持ち輝ける環境作りを目指しています。職員一人ひとりの能力や得意な事、もしかしたら自分でも分かっていない隠れた能力を見出してあげられるかもしれない、そんな職場になれればいいと思っています。そして当たり前と思うかもしれませんが、子どもたちの笑顔と成長が私たちの原動力です。現場での課題や支援の必要なお子さんへの対応は簡単ではありませんが、保護者や地域の方々との信頼関係を深めながら、より良い保育を提供できるよう取り組んでいきます。私たちの挑戦は、未来を担う子どもたちのための大切な基盤作りです。これからも保護者や地域の皆さまと共に、子どもたちの可能性を広げる保育を続けていきたいと考えています。
