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取り組んでみよう!

インタビュー

密なコミュニケーションで、安心と「プロ意識」を育む

岡山県倉敷市にある保育園の園長に、虐待防止のための取り組みについて、お話しを伺いました。―私たちの園では、職員一人ひとりが安心して働き、自分の役割にプロ意識を持って取り組める環境を大切にしています。園長自らが率先して話を聞き、信頼関係を築くとともに、全員で保育の質を高めるための取り組みを進めています。

目次

「いつでも話を聞くよ」職員一人ひとりに寄り添う
「不適切な保育を防ぐには、まず職員が自分の感情をきちんとコントロールできるようになること、それが一番大事だと思うんです」。続けて、「職員一人ひとりにとっても話を聞いてもらえる場がとても大切」と強調します。そのため、園長は自ら率先して職員のちょっとした不安や困りごとにも耳を傾け、解決への道をともに探ってきました。 当園で大切にしているのは、「職員自身が大切にされている」と日々実感しながら働いてもらうことです。それぞれの職員が子どもたちと真っすぐ向き合うためには、園長と職員とが向き合い、なんでも相談できる関係性が大切だと考えています。年2回行っている1対1の定期面談に加え、日頃から職員と向き合う時間を確保しています。 プライベートの悩みから日々の困りごとまで、どんなことでも気軽に相談できるよう、職員には「いつでも話を聞くよ」と繰り返し伝えています。そうすると、なにかあったときに「ちょっと話を聞いてほしい」と気兼ねなく相談をする職員も多く、職員の不安がどこにあるのか、わかるようになりました。 ただし、入職したばかりの職員にとっては、園長へ悩み相談をするハードルが高いことも事実です。そこで、「最近はどうですか?」「もう慣れましたか?」「なにか困ったことはないですか?」と積極的に声をかけ、話しやすい雰囲気づくりを心がけています。 そして、感情のコントロールが苦手な職員にも繰り返し話を聞いて、「どこにコントトロールできない原因があるのか」、一緒に考えるようにしています。
子どもたちに向き合う「プロ」の視点
「保育士の仕事は、ただの子守りじゃないんです。私たちは保育のプロなんです」。保育士歴20年を経て園長となった経験から、会議や面談で、繰り返し職員たちに語りかけてきました。当園で経験を積んだ職員には、「あの言葉がずっと心にあります」と言ってもらえたこともあります。 紋切り型に子どもの発達を年齢で捉えるのではなく、「目の前の子どもが今どう感じているのか、何をしようとしているのか」を見極めることが保育士の役割です。発達の仕方は千差万別で、子どもたち一人ひとりに得意不得意や好き嫌いがあります。そして、「この子は今どう感じているのか?」を正しくとらえるには多くの知識、コミュニケーション能力、観察眼が必要です。経験が浅い保育士にとっては、困難の連続。「どうしてうまくいかないのだろう」と、何回も壁にぶつかりながり、そのたびに悩み抜きます。私たち管理職や先輩職員は、「その子はこんな気持ちだったんじゃない?」「次はこうしてみたらどう?」とアドバイス。試行錯誤をするうちに、子どもたちの反応が変わっていくと、本人も自信がついてきます。私たちは、子どもたち一人ひとりの情緒や成長に寄り添える、保育のプロフェッショナルとしての姿勢を育てています。
職員同士で築く「共通理解」
全国的に保育士の人材不足が叫ばれていますが、一時、当園も深刻な人手不足に直面しました。「職員みんながいっぱいいっぱいになっているのに、すぐに解決できないことが本当に辛かった」。その悔しさを胸に、人材紹介や派遣職員の採用などあらゆる手段を活用し、人材確保を第一としました。「今はなんとか回っています。でも、保育士の心の余裕がなくなることが、一番怖い」と語る声には、切実さがにじみます。 そして、人材確保に苦労をした経験もあり、今いる職員たちが成長を実感できるような職場づくりにも努めています。 たとえば、月に一度の職員会議は、単なる報告の場ではなく、保育の質を向上させる場として機能しています。虐待に関する最新のニュースや事例を糸口にして、「私たちの園として注意すべきポイントはなにか」「考えられるヒヤリハットはなにか」など積極的に話し合います。職員それぞれの「気づき」を共有することで、園全体の「共通理解」になります。 また、中間層のミドルリーダーが主体となり、テーマ別の研修を実施しています。講師役を担う職員は、テーマ選びから担当します。主体的に研修に携わることで、今までの知識に加えてより勉強することが必要になりますし、考えをまとめ、人前で話をすることでスキルアップの機会となります。一方、参加者は身近な先輩の意見を通じて日頃の保育を振り返るとともに、自己啓発の機会となっています。これからも、職員一人ひとりが成長できる環境を整え、園全体でより良い保育を目指します。
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